【地獄の60日】市場からウニが消える日 – あての極み

【地獄の60日】市場からウニが消える日


9月、10月はウニが世界から消えます。

豊洲市場でもウニが非常に品薄の状態となっており、信じられない値段が付けられています。

 

今日はそんなウニの旬について調べてみました。

1、ウニの旬

ウニの競り場に足を運んで現場の臨場感から学んだこと、長年ウニのセリに参加し続けるベテラン目利き人の方々とのコミュニケーションで得た知識を元にお話していきます。

 

 

僕たちが日々食べている食材は大きく肉・野菜・魚の3種類に分ける事ができると思います。

これらの食材をスーパーで購入する時や食卓でご飯を食べるとき、もしくはお店で食べる時でも「旬」について考えたことはありますか?

 

夏に美味しくなる魚ってなんだっけ?冬の野菜は何だろう?と僕はたまに考えるのですが、旬の肉はなんだろう?とは中々考えないですよね。正直なところ、野菜も夏野菜と言われているトマト、ピーマン、ナス、カボチャ、キュウリも1年中スーパーに陳列されているし、冬野菜の白菜やレンコン、小松菜も勿論1年中スーパーに陳列されているので旬の野菜という感覚はほとんど無いに等しいです。

 

なぜ、肉や野菜に旬が無いのか。

 

それは、肉も野菜も天然ではなく“養殖”だからです。

肉も野菜も人間の飼育環境のもとで管理されており、餌や肥料が十分に与えられ小屋やビニールハウスの中で大切に育てられているので一年を通して安定的に出荷できることや、成長スピードをコントロールすることができます。ビニールハウス全壊や大雨による土壌崩壊といった自然災害により市場に野菜が減ってしまう事がありますが大きな自然の力が働かない限り、そのような状況にはなりません。

 

一方で、魚はどうでしょうか。

肉や野菜のほぼ100パーセントが養殖なのに対して、魚は「天然」「養殖」の割合で考えた場合、天然の方が多いと感じています。

そのため、少し天気が悪くなると船が沖に出られなくなり翌日の入荷はほとんど0になってしまいます。

入荷が0になると、(実際には0ということはないのですが)殆ど無くなってしまうと欲しい人の数は変わらないので、値段がものすごく跳ね上がってしまいます。

 

今日は、まさに値段がものすごく跳ね上がっている「ウニ」についてここからは書いていきます。

 

2、ウニの相場

皆さん、ウニの相場と聞いて何かイメージできることはありますか?

下の図は僕が作成したムラサキウニとバフンウニと赤ウニの年間の豊洲市場への入荷量イメージ図なのですが、バフンウニ もムラサキウニも赤ウニも全て入荷量の部分が「赤色」になっていないことがお分かりでしょうか。

これが俗に言う「地獄の2ヶ月」です。

「地獄の2ヶ月」は僕が勝手に名付けました(笑)

 

ウニ業界の地獄の2ヶ月

 

9月、10月はウニの産卵と保護のため禁漁になります。

その為、マーケットに流通するウニの量と質が著しく低下することを“地獄”と表現しました。

 

最も供給が安定している6月、7月と比較するとウニの質は良くて同等、値段は3倍といった状況になっています。具体的に言うと、身の色や形が整っている、自信を持ってお出しできるウニが¥5,000で手に入っていたところ、今の時期は自信を持ってお届けできるとは言い難い品質のウニが¥15,000を優に超えていると言った状況です。

 

 

それでは禁漁中の2ヶ月の間にはどんなウニが流通しているのか。

 

それは養殖ウニが市場に出回っています。

北海道のウニ会社が長い年月と莫大な費用を投じて完成させた養殖ウニは、天然ウニよりも格段に発色が良く甘みが強い為、非常に高品質のウニと言うことは、ウニの目利き人や料理人の皆さんお墨付きです。

中には養殖のウニしか使わないと言う料理人の方もいると聞きました。

 

養殖のウニも同じウニなのになぜ、産卵期の9月や10月に流通するのかと言うと、

餌の管理の他に水温が関係しているそうです。水温の管理により産卵期を3〜4ヶ月前倒しにすることで通常のウニの産卵期とずらしているそうです。

 

ウニの主食は昆布などの海藻類なのですが、元々は雑食の為コンブが無くなると魚の死骸など海藻意外の物を食べてしまいますが養殖ウニは筒の中に昆布だけを与えられている為、余計な雑味の無い昆布だけの旨味の詰まったウニへと成長します。

 

ウニを欲している市場関係者やお寿司屋さん、ウニを食べたい人々が困っているこの9月、10月の時期に最高に美味しいウニを供給できていることはとってもいすばらいいことだなと思いました。

 

10月末頃には例年、天然のウニが戻ってくるのであと少しの辛抱。です。

 

3、終わりに

豊洲市場のベテラン目利き人も毎年この禁漁期間は神経を尖らせると言う。季節の問題と言うことで、半ば諦めてウニの仕入れをしない人や事前の注文だけを揃える人、通常運行の人。様々です

過去に大きく損を出してしまったと言う目利き人の話などはリアルな臨場感を感じました。いつも値段で言うと1箱1万円くらいのウニを買ってくださるお客様の注文で、相場を考慮した予想の値段を1万円後半で伝えたところ大口の注文に切り替わったので気合いを入れてセリに望んだところ当日の価格は通常時の3倍であったと。でもセリが始まってしまうと誰にも相談できない中で「買わないと注文が揃えられない」でも「この値段では買ってくれるかわからない」こんな逼迫した状況の中で、ウニを購入したところ、「高すぎるから買えない」という結果になったと。

かなり大きな赤字を計上してしまい苦い経験をしたと言う貴重な体験談でありました。話を聞いている分にはとても面白かったのですが、自分がその状況だったらと言う気持ちで話を聞くとハラハラドキドキのスリルがありました。

他の目利き人も同じような経験をした事がある人が結構いるらしく、本当に難しく大変な時期である事がわかりました。

 

この大変な時期を超えて、早く美味しいウニを頬張れる日がくることを楽しみに過ごしましょう!

 

 

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